埼玉県議会議員 宇田川ゆきお

ヒトツキ 令和4年2月 「のれん」と「動物愛護条例改正」を振り返って

2022/03/03

まず、2月24日、ロシアが突如として隣国ウクライナに軍事侵攻しました。

埼玉県議会では2月28日、「ロシアによるウクライナへの侵攻に対し、強く抗議するとともに、軍の即時撤収、国際法の遵守を強く求める」という抗議決議を全会一致で採択しました。私自身もこの暴挙に対して、政治家として、そして、ひとりの人間として、為すべきことを考え、行動していかねばと思っています。

さて、1月のヒトツキで、企業の持つ無形の価値である「のれん」についての文章を書きました。その直後の2月1日、日経新聞で、企業の人材価値の開示の記事が取り上げられているのを目にしました。この人材価値も「のれん」の一つであります。タイミング良いなと思いました。

欧米では、人材価値(資本)の開示は当たり前のことになってきています。企業価値を高めるためには人材価値の創造が出来るか、出来ないかで、将来の価値は変わるものと思われます。

経営学の大家ピーター・ドラッカーの格言の中に、企業の目的は「顧客の創造である」という言葉があります。

この「顧客の創造」は、新しい顧客を創造するだけではなく、そのために有能・有用な企業内の人材をいかに育成するのかも含まれると思われます。そこには「顧客の創造」をすることができる人材をどれだけたくさん生み出せるのか、そのための教育や、成長できる環境が必要であると思います。

そこまで考えて、1月のヒトツキを読み返し、振り返ると、抜けていた部分がありました。それは自治体の人材価値としての視点です。

優秀な職員の存在は、それ自体、自治体の価値につながります。各職員が自らの経験・キャリアを積み、スキルを身につけていくことは、自治体にとっても明確な判断が出来ることにつながり、個人にとっても、やりがいにつながり、望ましいことです。

このような有能・有用な職員の存在は、ひいては、自治体の特徴が見えやすくなり、各自治体の分野別の評価でも見える化が進むものとも思われます。

今後は、自治体の企業価値を高めていくための人材価値のあり方を研究していこうと思いました。そして、改めて振り返りの時間は大切だなと思った次第です。

今月のヒトツキは、もうひとつあります。

前号の県政報告(令和4年新春号)でご紹介した「動物愛護条例」の途中の過程について、少し触れたいと思います。

きっかけは、日頃から交流をしている動物愛護団体の皆様からの今のペットの環境、特に一部の劣悪な環境で過ごしているペットをもっと守ることが出来ないかというご相談でした。

そのためには現行の条例を改正する必要があり、いままでの経緯や海外の事例を調べながら、「動物愛護」について今一度、考えました。

動物の命は、例え小さなものであっても、人間とその価値は同じであるということを理解し、尊重するという、動物愛護の精神は、まさに他者の価値を認め、思いやることです。それは生物の多様性の問題やLGBTにも無関係ではありません。

今、世界の大きな問題として、格差の拡大が叫ばれ、社会の分断が危惧されています。

私が今回、取り組んだ根っこの部分には、動物愛護が、他者に寄り添い、優しさと思いやりのある社会を育むことにも繋がり、格差の是正や分断の解消にも活きていくと信じたからです。そして、子を持つ親として、次の世代にもこの想いを共有して欲しいという教育としての大切さも後押しました。

実は、動物愛護の先進国といわれる英国、スイスやドイツなど欧州では日本とは格段に厳しい基準を設けています。例えば、ペットショップは法律で完全許可制、ペットショップで犬や猫の陳列販売を行われていないなど日本とは格段に厳しいルールがあり、家畜の飼育も、無用なストレスを与えないために飼育場の広さや輸送などにも細かい条件が決められています。

最終的にはそこを目指したい訳ですが、今回の議論の中では、途中、暗礁に乗り上げたこともありました。

悩んだ点は、この改正がペットショップなどへの民業圧迫につながるのではないかという指摘でした。

まさにコロナ禍で地域経済が打撃を受けている中で、民業圧迫となってしまえば、せっかくの理念も誤解されてしまい、社会への誤ったメッセージとなってしまいます。しかしながら、その分の補償を考えるとなると、改正へのハードルがさらに上がり、難しくなるのではないかと言う声もありました。

仲間たち執行部とも悩みましたね。膠着状態でした。

そのとき、日頃から指導を受けている、私の上司である先輩の県議が、私たちに「欧州レベルを目指すべきでしょ」「世界では当たり前だろ」という言葉で背中を押してくれました。

悩みが一気に吹っ飛んだ瞬間でした。

結果としては、当初の狙いを後退させることなく、その一方で、民業圧迫の心配に応えるため、条例には財政的支援を盛り込みました。業者の皆さんにも、欧州レベルの動物愛護精神をもったブリーダー制度に近づける努力していただけるような条例改正となったと思っています。

繰り返しになりますが、私たちの想いは、「最終的には欧州レベルの制度」です。今、その第一歩を条例改正という形となり、前進させることが出来ました。今回は、動物たちの劣悪な環境を先ずは是正していくことを先行させました。

引き続き、動物たちが安心して安全に過ごすことのできる環境が実現できるよう、取り組んでまいります。

2月17日から2月定例議会が始まっています。令和4年度の予算を決める大変重要な議会であります。目下、審議中ですが、議会が閉会次第、今回の予算のポイント等をお伝えできればと思います。